読書会の記録(18.7~19.12)

埼玉県大里郡寄居町で開催した読書会の記録です。

第6回読書会 ゴーゴリ『外套』無事終了いたしました。

 

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第6回読書会 ゴーゴリ『外套』無事終了いたしました。

6名の方にお集まりいただきました。とても寒い中、ありがとうございました。

「面白かった」「訳が素晴らしい」との声が多々あがり、作品の持つ力を非常に感じました。

今回は参加者の方の「いつか読んでみたい作品」とのリクエストです。

 

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■皆様の感想(アルファベット順)

H.Sさん
かわいそうな話なのに面白く読める!ゴーゴリの書く喜劇が見てみたくなりました。

M.Kさん
聖と俗が笑い、黒い笑いで表現されていて、おもしろかったです。寒い所は苦手なのですが、ロシアの気候も関係あるのかな・・・

M.Mさん
物語に没入しました。ロシア文学の一端にふれました。
訳者も、素晴らしい才能だと思います。

M.Sさん
アカーキーのような人が報われる世の中であって欲しいなあ・・・

Nさん
何も持っていない主人公が、希望の象徴のような外套を手に入れて幸せを感じたとたんに奪われて死んでしまうなんて・・・かわいそう過ぎます

Y.Sさん
職種や階級や身につけているものなどで、人が人を判断する材料にするのは仕方がないことなのかもしれないが、そこで人を判断したくはないと改めて思いました。
読み終わったあと、「面白い!」と声をだしてしまいました。


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■『外套』にちなんで二つの質問をさせて頂きました。

①これがあれば幸せなのに・・・と思った経験
②昔職場で見た、様子や風体、働きぶりなどが忘れられない人はいますか?

①では、皆様、過去や現在のとても個人的な事をお話してくださいました。
色んな思いで生きてらしたんだなあ・・・と聞き入ってしまいました。
答えづらい質問だったにもかかわらず、ありがとうございました。

②では、これまた色んな体験談が。ついつい大笑いしてしまうお話もあって。社会には本当に、様々な人がいますね。


■『外套』を部分に分けて、順番に気に入った箇所を朗読してもらい、感想を言い合いました。

 

「構わないで下さい!何だってそんなに人を馬鹿にするんです?」の場面。


他の社員に紙切れを振りかけられたり、ちょっかいを出されるアカーキイ・アカーエヴィッチ。
若手社員の胸に響いたこの台詞は、こちらの胸にも響いてきます。

ちなみに、アカーキイ・アカーエヴィッチの台詞で、訳による違いが結構あることを発見。

平井肇訳:「わたしだって君の同胞なんだよ」

浦雅春訳:「ぼくだって同じ人間ですよ」

浦さんの訳で、より身に染みて分かる感じがする、との声があがりました。

 

ペトローヴィッチが外套を仕上げて、持って来た場面。


感想を伺った時に、

「洋服を仕立て屋さんに頼んで、自分のために仕立ててもらって…、という、今の時代との違いをとても感じる」

と仰って頂きましたが、本当にその通りで、衣服を新調するという行為が今とは全く違う感覚であったのだなあ、と感じます。

自分の作った外套の仕上がりを、色んな角度から眺めまわす仕立て屋のペトローヴィッチが、何とも可笑しみを誘う場面です。

 

広場で追い剝ぎに襲われる場面。


やっと手に入れた外套を無残にも奪われる悲惨な場面。
「もし夜会に行っていなかったら、こんなことにならなかったのに。」
「人と関わろうとしなかったアカーキイ・アカーエヴィッチが夜会に出かけて、少し変わって来たかな?というところだったのに」
などの声が。

アカーキイ・アカーエヴィッチが、あまりにも不運です。


アカーキイ・アカーエヴィッチの死の場面

「誰からも庇護を受けず、誰からも尊重されず、誰にも興味を持たれずして、あのありふれた一匹の蠅をさえ見逃さずにピンで留めて顕微鏡下で点検する自然科学者の注意をすら惹かなかった人間」

・誰も愛さず、愛されずのアカーキイ・アカーエヴィッチが、生涯に一度の素晴らしい外套に包まれて、初めて「暖かさ」を感じていたのに
・展開にとにかく驚いた
という声があがりました。本当に、何というか可哀想ですよね・・・。

 

幽霊の場面


なぜ外套を奪った張本人でなく、役人を襲ったのか、との声が。
本当に謎です。よっぽど怒鳴られたのが辛かったのでしょうか。

一番最後に出てくる、「遥かに背が高くて、すばらしく大きな口髭をたてていた」幽霊。この幽霊は一体?

・当時の階級の違いが関係しているのでは、
・アカーキイ・アカーエヴィッチがちんちくりんな外見なのも、階級によるものだったのかも。
などの鋭い指摘が。

最後のこの幽霊がとても不思議だったのですが、なんとなく腑に落ちました。


ゴーゴリの生涯を確認


ゴーゴリの42年の生涯を見ていきました。
何度も原稿を焼却し、最後は断食で絶命したゴーゴリ。激しすぎる一生に息を吞んでしまいます。

 

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ご参加くださった皆様、ありがとうございました!
次回は太宰治富嶽百景』です。

よいお年をお迎えください。

 

上記文中の引用は

ゴーゴリ著 平井肇訳 『外套』 (岩波書店)

ゴーゴリ著 浦雅春訳 『外套』 (光文社)

によります。